Rebecca Omonira-Oyekanmi and Izzy Koksal(村上潔訳)「居住運動者たちは危険な家主と自治体のいじめに立ち向かう」

2018/09/18 村上 潔

【原著(Original text)】
Omonira-Oyekanmi, Rebecca and Izzy Koksal, 2017, “Housing Activists Stand up to Dodgy Landlords and Council Bullies”, openDemocracy, November 22, 2017, (https://www.opendemocracy.net/shinealight/shinealight/rebecca-omonira-oyekanmi-izzy-koksa/housing-activists-stand-up-to-dodgy-land).
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【リード文】グレンフェル・タワーの火災は、ロンドンにおける住宅供給の不公正に関する公的な議論を否応なく引き起こした。居住者たちは、個人的にも社会的にも、ずっと家主の言いなりになってきた。しかしいま、抵抗は強まっている。

〔2017年〕6月14日未明、ウェスト・ロンドンの24階建ての高層住宅を炎が飲み込み、70人を超える人々が亡くなった。350人以上の消防士たちが何時間にもわたって消火活動を行なった。

火が燃え盛るあいだ、生後6か月のリーナ・ベルカディを含む何百人もの人々が建物の高層階に閉じこめられた。その小さな女の子は、19階と20階の間の吹き抜け階段で、母親の腕に抱かれた遺体として発見された。

グレンフェル・タワーは、労働者階級の家族、若いカップル、難民、移民、独り暮らしの高齢者たちが入り混じったコミュニティの住まいだった。

最終的な死者数は不明である。建物内にいた未登録の移民たちは、身元確認されていない恐れがある。これまでのところ身元が確認された犠牲者は、71人だけだ。6月にロンドン警視庁は、すべての人の身元確認には数か月を要するだろうと宣言した。そして先週、同庁は「これまでに行なわれたすべての作業と専門家の助言に基づくと、グレンフェル・タワーの内部に人がまだ残されている可能性は極めて低い」と発表した。

調査は、火災をめぐる状況を捜査するためのものだった。引き起こされた破壊と死は、ケンジントン・アンド・チェルシー区による放置と管理ミスという、腐敗した問題を露呈させた。何百人もの居住者・生存者たちは、5か月後の現在もいまだにホームレス状態にある。11月初めに中央政府は、区長たちの人間性の欠如を批判する報告を発表した。その声明のなかで、コミュニティ・地方自治大臣サジッド・ジャヴィドは、火災に対する区の対応を「怠慢かつ無秩序だ」と述べている。

しかし、腐った地方政治に対する政府の批判は遅すぎた。居住者・生存者たちは、調査がロンドンにおける居住と不平等という根深い問題を無視することを危惧している。火災の条件を作り出したその問題を、だ。

6月の火災より何年も前に、居住者たちがあれほど当局に警告しようとしたのに。

〈グレンフェル・アクション・グループ[Grenfell Action Group]〉は、2010年に結成し、高層ビルの安全性に対する懸念を繰り返し提起してきた。グループは、グレンフェル・タワーならびにケンジントン地区内の他の住宅団地における管理ミスと放置の要点を説明したブログ記事を数え切れないほど発表した。そしてまともな居住を求めて運動を展開し、高級住宅開発の増加と公営住宅の管理された減少に対し異議を申し立てた。グループのブログは、ロンドンを富裕層以外誰にも住めないようにする変化に対抗する闘争を支援した。

こうした活動は珍しいものではない――ロンドン全域で、ラディカルな居住運動のグループは、敵対する住宅市場における居住者の権利のために闘っている。公営住宅は不足している。自治体は金がなく、貧困状態を行き来する人々や複雑なニーズをもった家族を支援する対応が不十分だ。民間の平均家賃は高い。

グレンフェル・タワー火災のあと、何が変わるのだろう?

ロンドンの草の根の居住運動者たちが思ったままに行動すれば、たくさんのことが〔変わる〕。

私たちは、サウス・ロンドンの地域団体〈ハウジング・アクション・サザーク・アンド・ランベス[Housing Action Southwark and Lambeth](HASL)〉のイジー・コクサルと、居住の不公正に立ち向かう彼女たちの活動について話した。

彼女たちは、ロンドンで居住の不公正/人種差別/貧困/セックスワーカーの権利/移民の権利の問題に取り組む、数あるラディカルなグループのうちの一つだ。地域社会に根付き、ベテランのアクティヴィスト/不安定労働者/貧困状態を行き来している家族が入り混じって構成されている。

HASLは、LCAPとして知られ、今年10周年を迎える〈ロンドン反貧困連合[London Coalition Against Poverty]〉の一部を成す。LCAPは、ロンドン特別区全体から集まった地域の居住支援/活動グループで構成されている。

HASLは、彼女たちが地方自治体や民間の家主のせいで直面する日常的な居住の不公正問題に取り組むため2013年に組織され、以降その問題についてブログで発信してきた。

以下は私たちの執筆によるイジーとのQ&Aの編集版である。彼女がグループの活動と直面している課題について語り、自分たちの居住連帯グループを立ち上げることに関心がある読者にアドバイスをしているもので、3分割して掲載する〔本記事はその1/3にあたる〕。

【注記】下記のQ&Aでは、私たちの質問と小見出しは太字で、イジーの回答はそのすぐ下に記してある。

〈ハウジング・アクション・サザーク・アンド・ランベス〉とは? どんな人が参加しているの?[質問]

〈ハウジング・アクション・サザーク・アンド・ランベス〉は、居住問題に直面した人々で構成されている、地域のコミュニティ・グループ。私たちは、お互いをサポートし、個別の居住問題をめぐる活動を組織し、そして居住の権利を求めて運動するために、月2回会合を開いている。

メンバーの大部分は、労働者階級の有色人種女性・移民女性と、その子どもたち。私たちの会合には子どもがいっぱい。その子たちを私たちがやっている活動に巻き込むためのいろいろな方法を、私たちは考えている。カリフォルニアのオルタナティブな年少版ガール・スカウト、〈ラディカル・モナークス[Radical Monarchs]〉のようなものを作り出したい。この夏、私たちは初めて宿題クラブの試みを行なった。

私たちにはまた、差し迫った居住問題は抱えていないが、居住の不公正、貧困、そしてジェントリフィケーションを懸念している支援者たちがいる。ロンドンでは、誰もがいつなんどき深刻な居住問題に直面するかもしれないことを十分に理解している。

危険な家主と自治体のいじめに対決を挑む[小見出し]

メンバーが直面する一般的な居住問題は、過密状況、解決されないホームレス状態、自治体からの住宅援助にアクセスすることの難しさ、居住に不適当な一時的宿泊施設に収容される、といったことだ。家族たちは、公営住宅への入居を待つあいだ、窮屈な環境で高い費用の一時的宿泊施設に何年も閉じ込められかねない。

それから、危険な家主たちがいる。最近、ある家主がメンバーの保証金を盗み取ろうとした。別の家主は女性メンバーにハラスメントをし、彼女の所持品を捨てると言って脅した。

こうした事例のいくらかと闘うため、私たちはお互いに付き添ってホームレス・アセスメントに向かう。これは、自治体が当該者にホームレス税を支払う義務があるかどうかを確かめるために、住宅課職員が当該者の事例を調査する場だ。もし当該者が単身のホームレスであれば、その人が住宅の援助を受けるのに十分なほど脆弱な状態かどうかを、自治体職員が判断する。私たちのメンバーは、これらの期間中にいじめと利用権限の制限を経験してきている(利用権限の制限は、自らが受ける権利をもつサービスに人々がアクセスすることを防ぐ際に自治体が行なう)。

支援をともなってアセスメントに出席することで、プロセス全体の恐ろしさをわずかながら減少させることができる。それが意味するのは、私たちは利用権限の制限に対し礼儀正しく挑戦し、そこで起こったことを記録し得るということだ。

また他の活動もある。私たちは、互いに助け合って用紙に必要事項を書き込み、優れた居住問題の弁護士を調達する。私たちはお互いを精神的に支援し、理解し、一緒に怒る。またある時には、区庁舎を占拠する。例えば、メンバーの一人が居住に不適当な一時的宿泊施設に収容され、彼女の子どもが通学のために3本のバスを乗り継がねばならなくなったとき、私たちは区庁舎まで〔デモ〕行進した。そしてその家族に学校から近い住居を提供するよう要求した。私たちが到着してから30分後、適切な一時的宿泊施設は見つけられた。

HASLは現在4年を過ぎ、ホームレス問題/不安定居住/医療問題/育児責任/賃労働その他のストレス問題に取り組む人々によって自発的に組織されたグループとして、大きな成果を得るに至った。しかしそこへもってきて、現在数人のメンバーたちにはブレグジットについて心配すべきことがある。「彼らは私たちを追い出すつもり?」、あるメンバーは最近の会合でそう尋ねた。

〈ハウジング・アクション・サザーク・アンド・ランベス〉はなぜ結成されたの?[質問]

苦しみ、貧しい暮らしを送っている人々が、安全な住居にアクセスすることができない、もしくは人種/階級/移民の地位によって差別待遇を受けている場合、居住問題に取り組むグループの存在はきわめて重要になる。

ホームレス状態にあるときに支援を受けることは、自治体によって困難にさせられている。基本的な住宅援助にアクセスすることは、一人では不可能だ。英語が母語でない場合は、さらに大きな障壁が立ちはだかる――私たちのメンバーの多くがそうだった。

ホームレス状態にある人々に対し支援を受ける権限を制限することは、ランベス区・サザーク区に限った問題ではない。ロンドン全体で、不運に見舞われている人々が、最も基本的な居住権にアクセスしようと苦闘している。グレンフェル・タワーの居住者たちも、いま同じ闘いを経験している。

ケンジントン・アンド・チェルシー区役所がグレンフェルの居住者たちに対して可能な限り迅速に思いやりのある再居住プロセスを進めることを、私たちは期待していた。しかし、報道は居住者たちがいまだに正当な居住支援を得るために闘っていることを示唆している。

グレンフェルの居住者たちが直面した再居住の問題は、私たちのメンバーが経験したことの繰り返しだ。特別区内の一時的宿泊施設に収容されることになるかどうかについての、自治体からの混乱・矛盾したメッセージのようなもの。個々の議員たちの傲慢な態度。自治体は集合的に、人々が必要とするものを聞くことができていない。

法律が不十分であるなら[小見出し]

優れた居住問題の弁護士にアクセスすることは(法的支援を受ける資格がある場合)重要だが、法的手続きは時間がかかり、ストレスが多く、制約を受けることがある。私たちは、法的手段を補完するために、集団で組織化している。あるHASLのメンバーは、彼女の弁護士から、自治体に勝訴したことを祝福された。彼は、自身の役割が最低限のものだったことを認めた!

この特定のメンバーは、30年間虐待に耐えてきたDVサバイバーで、にもかかわらずサザーク区は当初、彼女が支援を受ける資格を満たすほど脆弱な状態ではないと判断した。HASLのサポートを受けホームレス訴訟を乗り切ったことで、彼女はまもなく新しい公営アパートに移れるだろう。私たち(HASL)のサポートがなかったら諦めていただろう、と彼女は言う。そのお返しとして彼女はそれ以降に、DVから避難している何人かの友だちがホームレスとしての権利にアクセスすることを支援してきた。私たちがお互いに対して行なう集団的サポート・理解・決断は、特別なもので、そして気持ちを奮い立たせてくれるものだ。

【訳者より】画像とそのキャプション、ならびに文中の語句に貼られたリンクは省略している。原文記事ならびに下記[■参考]を参照されたい。

■参考
◇Rebecca Omonira-Oyekanmi
reporting & writing
・Twitter:@Rebecca_Omonira
◇Grenfell Action Group
Grenfell Action Group | Working to defend and serve the Lancaster West community
◇Housing Action Southwark and Lambeth(HASL)
Housing Action Southwark & Lambeth | Support and action for decent homes for everyone
・Twitter:@HousingActionSL
・Facebook:Housing Action Southwark and Lambeth
◇London Coalition Against Poverty
London Coalition Against Poverty
◇Radical Monarchs
Radical Monarchs – An Activism Organization for Girls of Color
・Facebook:Radical Monarchs