デトフォードの占拠運動者たちは訴える、「ジェントリフィケーションは組織犯罪だ」

2018/09/03 村上 潔

サウスイースト・ロンドンのルイシャム[Lewisham]区に位置するデトフォード[Deptford]。ルイシャム区は、移民・一人親世帯が多く、ロンドン市内で平均世帯収入が最も低い区の一つであり、デトフォードはそのルイシャム区のなかでも特に貧困世帯が多い地区の一つとされる(山脇 2012)。

そのデトフォードにあるコミュニティ・ガーデン〈オールド・タイドミル・ガーデン[Old Tidemill Garden]〉が、8月28日の夕方、〈セーブ・レジナルド・セーブ・タイドミル[Save Reginald Save Tidemill]*以下「SRST」と略記する〉キャンペーンの活動家たちによって占拠された(Worthington 2018)。SRSTは、〈レジナルド・ハウス[Reginald House]〉(ガーデンに隣接する公営アパート)と〈オールド・タイドミル・ガーデン〉の解体ならびにタイドミルの土地の開発を阻止するための、コミュニティによる、コミュニティのためのキャンペーンである(Save Reginald Save Tidemill, https://www.facebook.com/pg/savetidemill/about/)。以下、その行動の背景を、〈No Social Cleansing in Lewisham〉による簡単な解説(https://www.facebook.com/nosocialcleansinglewisham/posts/481402162327335[2018年8月29日])から把握してみよう。

〈オールド・タイドミル・ガーデン〉は、ガーデンの北側にある〈オールド・タイドミル・スクール〉の敷地再開発案の一環として、隣接する〈レジナルド・ハウス〉の16世帯の公営アパートと共に解体される計画のもとにある。それに先立ち、29日朝にルイシャム区役所がガーデンを強制封鎖しに来る予定になっていた。SRSTはそれを阻止するため、ガーデンを占拠したのだ。ガーデンは人々にとても愛されている美しいコミュニティ・スペースであり、〈レジナルド・ハウス〉の居住者の80%は住宅の取り壊しを望んでおらず、自らに再開発に関わる投票をさせるよう区役所に求めている。SRSTは28日に司法審査のための証拠を提出し、一週間で審査結果が出ることになっている。

SRSTが作成した、占拠への支援を呼びかけるプレスリリース(上記URLに画像データとして添付されている)には、以下のように記述されている。

ルイシャム区役所は、この美しいガーデンと、隣接する〈レジナルド・ハウス〉の16世帯の公営アパートを破壊したがっている。それは〈オールド・タイドミル・スクール〉の再開発の一環として、高価すぎて手が出ないアパートを新しく建てるためだ。私たちは「NO!」と言う。私たち運動者は、ルイシャム区役所がガーデンを差し押さえ、板で封鎖してしまうのを阻止するために、ガーデンを占拠した。区役所に対する私たちの主張はこうだ。ガーデンとアパートを排除する計画を振り出しに戻し、見直せ!

また、Worthington(2018)は、事態の内実を以下のように説明している。

ガーデンは、人々にとても愛されているコミュニティ・スペースで、約25年前に当時あった学校の教師・保護者・生徒たちによって開発された。その学校が閉校し、新たなアカデミーにとって代わられた際に、ガーデンは地域のコミュニティに賃貸された。しかしいま、区役所はそれを取り戻して破壊したがっている。隣接する〈レジナルド・ハウス〉の16世帯の公営アパートも、だ。その目的は、住宅協会〈ピーボディ[Peabody]〉と共に新しい住宅を建設するためだ。そしてその住宅のほとんどは任意売却されるだろう。

つまり、公共空間と公営住宅を私営化するということだ。これはまさしくジェントリフィケーションそのものである。Milburn(2017)によれば、SRSTと居住者たちは、区役所の姿勢を「社会浄化[Social Cleansing]」だと告発している。それはいうまでもなく、ジェントリフィケーションを象徴する言葉だ。ルイシャム区役所は再開発を止めるよう求めるコミュニティからの嘆願を無視し、解体を唯一の方法として前面に打ち出している、と住民たちは言う。2016年9月、建設会社と複数のデベロッパー(そのうちの一つが現在の〈ピーボディ〉)が手頃な価格の住宅建設を区の戦略計画委員会に申し出たところ、評議員たちの投票は4-2で再開発に賛成という結果となった。その後〈グレーター・ロンドン・オーソリティー[GLA]〉からの追加助成金があり、デベロッパーによる利益の再投資と、区からデベロッパーへの補助金交付とが保証されると、2017年9月には全建設予定住宅数に対する手頃な価格の住宅の設定比率が(前年の)16%から47%へと上昇した(Milburn 2017)。ここには、住民・コミュニティをないがしろにする裏側で行政とデベロッパーが(両者の資本循環関係に基づいて)連携して再開発を進めていくジェントリフィケーションの様態が、明確に示されている。

本稿では本件に関するこれ以上の解説――現在に至る経緯、当事者・関係者の声など――は省かせていただく。詳しくはMilburn(2017)・Fraser(2018)・Worthington(2018)を、また占拠前後の動静についてはWitton(2018)を参照されたい。なお、現時点で最新の報道映像としては、Real Media(2018)がある。

さて、占拠されたガーデンのフェンスには“THIS AREA IS UNDER COMMUNITY PROTECTION[この空間はコミュニティの管理下にある]”と書かれた横断幕が掲げられ(https://twitter.com/greenandreac/status/1034850785698435073:添付画像1枚目/https://www.facebook.com/savetidemill/posts/461374561014074)、ガーデン内には約12のテントが張られ(https://twitter.com/bridiewitton/status/1034775529428328448)、さらにツリーハウスまで建てられている(https://twitter.com/greenandreac/status/1034850785698435073:添付画像2枚目)。BBCのような主要メディアも取材に入り(https://twitter.com/oldtidemillgrdn/status/1035563022746628096https://twitter.com/achilles_newx/status/1035251482428407808)、その注目度は高い。

9月1日、SRSTは「ルイシャム区役所とデベロッパーの圧力からデトフォードを取り戻す」ための「コミュニティ・カーニバル」、《Reclaim Deptford! Carnival》を開催した(https://twitter.com/SouthwarkNotes/status/1035516817706500098https://twitter.com/achilles_newx/status/1035515403676594176https://twitter.com/SouthwarkNotes/status/1035928258871795715)。カーニバルはガーデンを出発し、〈レジナルド・ハウス〉を通り、〈アキリーズ・エステート[Achilles Estate]〉――このアキリーズ地区も、同様にルイシャム区役所による破壊の危機にあり、対抗運動を展開している。Milburn(2017)ならびに〈Save Achilles Area〉のTwitterアカウント(https://twitter.com/achilles_newx)を参照されたい――近くで開かれたコミュニティ・フェスティバルの会場まで行進した(https://twitter.com/achilles_newx/status/1035854600094601217https://twitter.com/achilles_newx/status/1035855619033640960)。そのなかで筆者が注目したのは、“GENTRIFICATION IS ORGANIZED CRIME[ジェントリフィケーションは組織犯罪だ]”と書かれた大きなバナーが掲げられていたことだ(画像:https://twitter.com/oldtidemillgrdn/status/1036365072778649600の添付画像3枚目/映像:https://twitter.com/SouthwarkNotes/status/1035936178200035328の0:36~0:42)。この言葉はまさに、ジェントリフィケーションの本質を端的に突いている。行政がデベロッパーと手を取り合い、住民・コミュニティの居住権・自治権を無視/侵害/蹂躙していく過程/実態には、まさに組織犯罪という言葉がふさわしいだろう。

カーニバルが到着したコミュニティ・フェスティバル会場は〈テント・シティ[Tent City]〉と名づけられた空間で、デトフォードとニュー・クロス[New Cross](ルイシャム区)で活動する複数のハウジング問題のグループ/活動家たちが共同で運営する形態で創出された空間だった。そこでは、パネルディスカッションやバナー/バッジ制作のワークショップが開催され、情報交換と創造的な交流、連帯関係の強化が実現した(https://twitter.com/achilles_newx/status/1036034507370115072)。

このように、ロンドンの一角のローカルな次元ではあっても、ジェントリフィケーションに対する個別のコミュニティによる力強い対抗行動があり、また近接するグループの活動が協力関係にあることは、けっして見過ごせない点だろう。こうした直接行動と連帯と創造の力が、今後いかなる展開をコミュニティ内外で見せていくのか。注意して細やかに追う必要がある。

【付記】現在SRSTは、司法審査費用と活動資金のクラウドファンディングを実施している(The Deptford Dame 2018/Save Reginald! Save Tidemill! n.d.)。

【追記(2018/09/05)】9月2日に公開された報道映像を紹介します。
◇Guestlist, 2018, “Residents gather to stop the development of Old Tidemill Wildlife garden”, September 2, 2018, https://youtu.be/TyVdi-zvJGk
【追記(2018/09/14)】新たな報道を紹介します。
◇Worthington, Andy, 2018, “The Battle for Deptford and Beyond”, Novara Media, September 13, 2018, https://novaramedia.com/2018/09/13/the-battle-for-deptford-and-beyond/
【追記(2018/09/22)】新たな報道を紹介します。
◇News Shopper, “Campaigners Occupying Old Tidemill Wildlife Garden Vow to Fight on”, News Shopper, September 17, 2018, https://www.newsshopper.co.uk/news/16883713.campaigners-occupying-old-tidemill-wildlife-garden-vow-to-fight-on/
【追記(2018/09/24)】〈Deptford Debates(@DeptfordDebates)〉の活動報告の一端を紹介します。
◇kiyoshi murakami(@travelinswallow)
「【訳】「〔デトフォードの〕〈レジナルド・ハウス〉居住者の大多数が黒人だと、私たちは学んだ。私たちは現在、時に人種差別的・性差別的・年齢差別的・階級差別的な「〔都市〕再生」の影響を克服するコミュニティ主導の取り組みを、より活用する方法について議論している。」https://twitter.com/DeptfordDebates/status/1043486537772609536」
[2018年9月24日20:31 https://twitter.com/travelinswallow/status/1044187438984253441
【追記(2018/09/26)】新たな映像と報道を紹介します。
◇WoolfeVISION London, 2018, “Save Reginald House and the Old Tidemill Wildlife Garden campaign”, YouTube, September 25, 2018, https://youtu.be/dk315II-TCM
◇News Shopper, 2018, “Old Tidemill Wildlife Garden Campaigners Served Court Notice”, News Shopper, September 26, 2018, https://www.newsshopper.co.uk/news/16902075.old-tidemill-wildlife-garden-campaigners-served-court-notice/

■文献
◇Fraser, Calum, “Garden to be lost in estate demolition”, South London News, June 19, 2018, https://www.londonnewsonline.co.uk/garden-to-be-lost-in-estate-demolition/
◇Milburn, Ella, 2017, “Lewisham Residents Fighting to Save Homes from Demolition Accuse Council of ‘Social Cleansing'”, Eastlondonlines, December 8, 2017, http://www.eastlondonlines.co.uk/2017/12/lewisham-residents-fighting-save-homes-demolition-accuse-council-social-cleansing/
◇Real Media, 2018, “Old Tidemill Wildlife Park: Locals begin direct action occupation to save 74 trees”, Real Media, September 2, 2018, https://realmedia.press/old-tidemill-occupation/
◇Save Reginald! Save Tidemill!, n.d., “Help us Save Reginald House and Tidemill Wildlife garden”, Crowdjustice, https://www.crowdjustice.com/case/save-reginald-save-tidemill/
◇The Deptford Dame, 2018, “Tidemill Campaigners Seek Funds for Judicial Review”, The Deptford Dame, August 16, 2018, https://deptforddame.blogspot.com/2018/08/tidemill-campaigners-seek-funds-for.html
◇Witton, Bridie, 2018, “Occupation of Old Tidemill Wildlife Garden Continues Despite Council Order”, News Shopper, August 30, 2018, http://www.newsshopper.co.uk/news/16606512.occupation-of-old-tidemill-wildlife-garden-continues-despite-council-order/
◇Worthington, Andy, 2018, “Why We’ve Occupied the Old Tidemill Wildlife Garden in Deptford to Prevent Lewisham Council’s Demolition Plans”, Andy Worthington, August 31, 2018, http://www.andyworthington.co.uk/2018/08/31/why-weve-occupied-the-old-tidemill-wildlife-garden-in-deptford-to-prevent-lewisham-councils-demolition-plans/
◇山脇啓造 2012 「[多文化共生社会に向けて:第63回]ロンドン・ルイシャム区」,JIAM全国市町村国際文化研修所メールマガジン(2012年6月27日),https://www.jiam.jp/melmaga/kyosei/newcontents63.html